シミができる原因と美白になるために気をつけること

敏感肌のスキンケアコラム

美白とは何か。
それは肌の色が白くなることである。
そう考える人もいるかもしれない。
だが圧倒的に多いのは、顔の肌悩みを解決する方法としての美白だ。

具体的にいうと、色素斑(しきそはん)。
色素斑というのは、色素異常症による皮膚疾患のひとつ。

色素斑による肌悩みは、以下のようなものである。色素沈着を伴うものと考えてよい。

肝斑(かんぱん)は、一般的には「シミ」と呼ばれる。顔の中心を軸にして、左右対称に、とくに眼の外側に色素斑ができ、女性に多くみられる。原因は不明。ただし、妊娠や避妊薬が引き金になることがあるので、女性ホルモンの関与が疑われる。
ただ、加齢とともに現れる、「老人性色素斑」も「シミ」と認識される。こちらは日光に含まれる紫外線が原因と考えられている。

雀卵斑(じゃくらんはん)は一般的に「そばかす」と呼ばれる。スズメの卵の殻の模様のような色素斑が現れる。思春期に現れることが多い。遺伝する場合もある。

その他の原因で色素沈着を起こす場合もある。日焼けや薬品による影響により肌の一部が黒ずむこともあれば、ニキビなどの炎症後の色素沈着もありうる。

肌悩みを解決する美白とは、どのようなものだろうか。
何らかの疾患が背後に存在する場合を除いて、色素斑や色素沈着の大元の原因は分からないことが多い。そこにアプローチできる方法は極めて少ない。
そこで、色素が作られるプロセスや色素沈着が進行するプロセスに対して、それを緩和させるような方法が、一般的な美白として考えられている。

色素沈着になるプロセスとは何か

色素沈着が起きる状態というのは、「メラニン」が過剰に生成されることによって引き起こされる状態と考えてよい。

メラニンはもともと人間の身体でつくられる色素の1種だ。目、皮膚、髪など、われわれ人間の身体の色をつくる色素のひとつである。
肌のメラニンは、表皮の下層にあるメラニン細胞(メラノサイト)でつくられる。

紫外線はメラニン細胞の活動を刺激し、血液中に含まれるアミノ酸の一種「チロシン」からメラニンが生成される。
だが太陽から降りそそぐ紫外線は、人間の細胞の核のDNAを破壊する可能性がある。
皮膚で作られたメラニンは、太陽からの紫外線を吸収し、人間の細胞を紫外線から守るはたらきがある。

つまり、ここまでは、人間に昔から備わった紫外線から身を守るための防御機構なのだ。
その結果、メラニンによって皮膚が茶色、または黒色になり、「日焼けした」状態になる。

では、作られたメラニンはその後どうなるのだろうか。
紫外線を浴び続けたりして、メラニンが作られ続けることがなければ、自然とメラニンは排出される。

皮膚には、健康な状態を保つために、自分自身で生まれ変わる仕組みがあり、これを「ターンオーバー」と呼ぶ。

皮膚は、最も奥にある「皮下組織」と、中間にある「真皮(しんぴ)」、最も表面にある「表皮(ひょうひ)」からなる。

表皮のなかの深いところ、つまり真皮の近く(基底層)で肌の元となる細胞(角化細胞)が作られる。
この細胞は、約4週間かけて、表皮の一番外側へ押し上げられ、その間に角層(角質層)へと変化していく。角層は皮膚のバリア機能や保湿機能を担いつつ、2週間後には垢やフケとなってはがれ落ちていく。
これがターンオーバーだ。
このターンオーバーに合わせて、メラニンも細胞の老廃物などと一緒に排出される。

ではなぜ色素沈着が起きるのか?
自然に排出される量以上に、過剰なメラニンの生成が起きているからと考えられる。

よって美白とは、浴びる紫外線を減らすとともに、過剰なメラニン生成を抑えることがその方法となる。

さらに、美白化粧品は、美容目的であり、治療をうたうことはできない。
美白化粧品は、メラニン生成を抑制し、シミそばかすをふせぐことはできる。
美白化粧品によって、シミを薄くすることはできない。

メラニンの生成のメカニズム

メラノサイトによる、メラニン生成のメカニズムを詳しく紹介する。

紫外線が肌に当たると、メラノサイトが刺激を受けて活性化する。

メラノサイトは、紫外線などの刺激を受けてない時は、円柱状でまん中が太く、両端がしだいに細い、いわゆる紡錘の形をしている。刺激を受けて活性化すると、木の枝のように触手が広がり、形を変える。

それだけではない。
表皮のメラノサイトと、まわりにある角化細胞とは、密接な情報ネットワークで結ばれている。
角化細胞から発せられる情報伝達物質もメラノサイトを活性化させる。
これらは紫外線を浴びたときの、活性酸素の発生が引き金となる。

情報伝達物質には、
・サイトカイン…幹細胞成長因子(SCF)などの、免疫応答、炎症反応などを制御する物質
・ホルモン…メラノサイト刺激ホルモンなど
・その他の化学伝達物質
などがあり、これらは細胞の増殖を制御するはたらきをもつ物質である。(メラノサイト活性化因子ともいわれる。)

活性化されたメラノサイトでは、その内部にある「メラノソーム」という細胞小器官に、「チロシナーゼ」といったメラニン合成酵素が運ばれてきて、メラニンが作られるようになる。

メラニンの原料となるのは、アミノ酸のひとつ「チロシン」である。
チロシナーゼが、チロシンを「ドーパ」という物質に変え、さらに「ドーパキノン」へと変化させる。
ドーパキノンは反応しやすく、酵素の力を借りずに「ドーパクロム」へと変化する。
ここで再び酵素の助けを借りるとDHICA(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸)が生じ、酵素の助けを借りなければDHI(5,6-ジヒドロキシインドール)が生じる。そして、これらの物質が結合して鎖状や網状になる(重合する)と大きな高分子となり、「ユーメラニン」となる。
ユーメラニンは、褐色・黒色のメラニンである。
ここで、
酵素「チロシナーゼ関連タンパク-2」はDHICAを生じる手助けをする。
酵素「チロシナーゼ関連タンパク-1」はDHICAを酸化させて重合するのを助ける。

ドーパキノンが「システイン」と反応すると、「システィニルドーパ」などの数段階の変化を経て「フェオメラニン」となる。
フェオメラニンは、黄色・赤色のメラニンである。

フェオメラニンは白人に多く含まれているメラニン、ユウメラニンは黒人に多いメラニン、黄色人種ではフェオメラニンとユウメラニンが混合している。

これらのメラニンが、メラノソームで作られる。
それだけでなく、メラノソームにあるタンパク質と結合し、メラニンタンパク複合体となり、メラノソームはこれらの物質で埋めつくされていく。

その間、メラノサイトの木の枝のような触手の先端のほうへ、メラノソームが移動していく。
ここで驚くべき事が起こる。
表皮の角化細胞が、木の枝のような触手の端を取り込み、メラノソームを吸収してしまうのだ。

角化細胞はメラノソームを細胞の核の周囲に集め、「メラニンキャップ(核上帽)」をつくる。
メラニンキャップが細胞の核を取り巻くことで、われわれの皮膚を形成している角化細胞は、細胞の核を紫外線から守っているというのだ。

これが、肌がメラニンを用いて紫外線から身を守る仕組みである。

角化細胞が肌の表面へと移動し、角層(角質層)へと変化していくあいだに、細胞内の小器官である「リソソーム」と融合する。
リソソームは細胞内で消化・分解のはたらきをする。メラニンはリソソームに消化され、見えなくなっていく。

過剰なメラニンの生成を防ぐにはどうしたらよいのか?

美白化粧品が、メラニン生成を抑制し、シミそばかすを防ぐにはどうしたらよいのだろうか。

メラニンが作られる過程を大雑把にまとめる。

紫外線を浴びる

情報伝達物質がメラノサイトを活性化
チロシン
(チロシナーゼが助ける)
ドーパ
(チロシナーゼが助ける)
ドーパキノン

ドーパクロム
(チロシナーゼ関連タンパク-2が助ける)
DHICA
(チロシナーゼ関連タンパク-1が助ける)
メラノソームがメラニンでいっぱいになる

角化細胞へに吸収され、メラニンキャップになる。

ターンオーバーとともに、リソソームに消化される。

そうすると、美白化粧品が、メラニン生成を抑制するためには、大きく分けて以下の戦略が成り立つだろう。
・情報伝達物質を妨害する
・チロシナーゼを妨害する
・チロシナーゼ関連タンパク-2を妨害する
・チロシナーゼ関連タンパク-1を妨害する
・メラノソームが角化細胞へ吸収されるのを妨害する
・ターンオーバーを早める

そこで、厚生労働省が認めた美白有効成分が、どんな戦略の元につくられたかをまとめておく。

プラセンタ チロシナーゼを妨害する
エラグ酸 チロシナーゼを妨害する
コウジ酸 チロシナーゼを妨害する
チロシナーゼ関連タンパク-2を妨害する
トラネキサム酸 情報伝達物質を妨害する
トラネキサム酸セチル (TXC) 情報伝達物質を妨害する
4MSK (サリチル酸誘導体) チロシナーゼを妨害
リノール酸S チロシナーゼを妨害
ニコチン酸アミド
(ナイアシンアミド)
メラノソームが角化細胞へ吸収されるのを妨害する
デクスパンテノールW(PCE-DP) ターンオーバーを早める
ビタミンCエチル
アスコルビン酸グルコシド
アスコルビルリン酸ナトリウム
リン酸アスコルビルマグネシウム
(ビタミンC誘導体)
チロシナーゼを妨害する
メラニンを還元
アルブチン チロシナーゼを妨害する
カモミラET 情報伝達物質を妨害する
マグノリグナン チロシナーゼを妨害する
ルシノール チロシナーゼを妨害する
チロシナーゼ関連タンパク-1を妨害する
エナジーシグナルAMP
(アデノシン一リン酸二ナトリウム)
ターンオーバーを早める

※メラニンの還元…メラニンは酸化状態で色がより黒く、還元状態では色が薄くなるとされる。

なお、その他の美白成分として以下のものもある。

アゼライン酸 チロシナーゼを妨害する
レチノール ターンオーバーを早める
ハイドロキノン チロシナーゼを妨害する

プラセンタ

プラセンタ(プラセンタエキス)は、動物の胎盤から得られるタンパク質である。
主にブタの胎盤が使われるが、医薬品としてはヒトの胎盤が使われることもある。
胎盤は胎児へ栄養を送る役割があるので、必須アミノ酸や、ビタミン、マグネシウム・カルシウムなどのミネラル、酵素など、多くの栄養素を含んでいる。
プラセンタエキスは、チロシンがドーパになる反応において、チロシナーゼのはたらきをじゃますることにより、色素沈着を抑える作用がある。
1980年以前に、医薬部外品のプラセンタエキスは美白有効成分として認められていた。当時から「日焼けによるしみそばかすを防ぐ」という効能を表示していたが、ヒトでの臨床試験を行ったのかは不明である。

エラグ酸

エラグ酸は、イチゴ、ラズベリー、クランベリー、ブドウなどに含まれている。
化粧品では、「タラ」という原産地が南米ペルーのマメ科の低木の鞘(さや)が使われる。
タラの写真は南米植物写真集プランタス 「タラ(Tara)」のページで見ることができる。
※日本で山菜として見られる「タラの芽」が生育した「タラノキ」(ウコギ科の落葉低木)とは別物。
タラの鞘(さや)から採取したタラタンニンを酸化させることで、エラグ酸が得られる。
チロシナーゼは、銅を含む酸化還元酵素である。
エラグ酸は、チロシナーゼの銅の部分を取り込んでしまうことで、チロシナーゼのはたらきを鈍らせてしまう。

コウジ酸

コウジ酸は、味噌、醤油、日本酒などの醸造に使われる「コウジカビ」が、糖を発酵させることで作られる。
水およびエタノールに溶ける。多くの金属イオンと結合する性質を持つ。
そこで、銅を含む酸化還元酵素であるチロシナーゼの銅の部分を取り込み、チロシナーゼのはたらきを鈍らせてしまう。
コウジ酸は、チロシナーゼ関連タンパク-2のはたらきをじゃまし、DHICAが重合してメラニンが作られるのを抑える効果もある。
チロシナーゼ関連タンパク-2にも銅が含まれているからだと考えられている。

4MSK (サリチル酸誘導体)

4-メトキシサリチル酸カリウム塩の略称。資生堂が開発した医薬部外品有効成分。
酵素チロシナーゼの活性を抑える。

リノール酸S

サンスターが開発した医薬部外品の美白成分。
リノール酸を細胞膜類似構造でカプセル化したもの。角質への浸透を向上させる。
酵素チロシナーゼを分解する。

トラネキサム酸、トラネキサム酸セチル (TXC)

トラネキサム酸は人工合成されたアミノ酸であり、もともとは止血剤・抗炎症剤として使われる物質である。

「フィブリン」というタンパク質がある。このタンパク質のはたらきにより、傷口ができたときの出血が止まる。
だが、血管の内膜が傷ついたときにも、フィブリンのはたらきにより、血管内で血栓ができてしまう。
血管が詰まるのを防ぐためには、この血栓を溶かす必要がある。
そこで、「プラスミン(プラスミノーゲン)」というタンパク質分解酵素が登場する。プラスミン(プラスミノーゲン)はフィブリンを分解して血栓を溶かしてしまう。これで血管が詰まることはなくなる。
ここで、トラネキサム酸はプラスミン(プラスミノーゲン)に結合してしまう。プラスミン(プラスミノーゲン)はフィブリンを分解できなくなるので、止血が早まるというわけだ。

また、メラノサイトを活性化させる情報伝達物質も、プラスミン(プラスミノーゲン)によって活発になることが分かっている。
トラネキサム酸がプラスミン(プラスミノーゲン)に結合すると、情報伝達物質が活発に作られなくなり、メラノサイトを活性化させるためのシグナルが届きにくくなる。

トラネキサム酸セチル (TXC)は、親水性のトラネキサム酸に親油性を付け加え、両親媒性としたもの。
親油性によって、肌に吸収しやすくなる。また、浸透しながら皮膚の中にある酵素によって、もとのトラネキサム酸に戻るので、表皮の奥のほうまでトラネキサム酸が届くのではないかと考えられている。

ニコチン酸アミド(ナイアシンアミド)

ビタミンB3のアミドである。
アミドとは、大雑把に言えば、水素や炭素がくっついた窒素(アミン)と脱水結合したもの。
ニコチン酸=ビタミンB3、なのだが、有害物質のニコチンと紛らわしいため、いろいろな別名がある。
「ニコチン酸ビタミン」の略称として、「ナイアシン」が使われることもある。
医薬品としては「ニコチン酸アミド」と表示され、化粧品では「ナイアシンアミド」と表記される。
また、「リンクルナイアシン」と書かれた場合は、シワ改善の有効成分を指す。
ニコチン酸アミドからニコチン酸への変換が体内で起きるが、両方ともビタミンB3としての機能は変わらない。
美白成分としては、メラニンを含んだメラノサイト内のメラノソームが、角化細胞へ移動するのを防ぐはたらきを持つ。

デクスパンテノールW(PCE-DP)

POLA(ポーラ)によって開発され、2018年に新承認となった美白有効成分。
表皮細胞のクエン酸回路を活性化させることで、エネルギー産生量を高め、ターンオーバーを促進することができる。

ビタミンC誘導体

アスコルビン酸(ビタミンC)は、光や熱が加わったり、酸化されたりすると壊れてしまう。
化粧品においてビタミンCを効果的に作用させるために、安定化させたものがビタミンC誘導体である。
もともとビタミンCは水に溶けやすい「水溶性」である。
だが、皮膚は水溶性の物質を弾く作用が強い。
そこで皮膚に浸透しやすいように合成されたものがビタミンC誘導体で、油溶性に変えてしまったものや、水溶性と油溶性の両方の特性をもつもの、水溶性のままで分子構造を壊れにくくしたものがある。

以下は水溶性のビタミンC誘導体である。
アスコルビン酸グルコシド、アスコルビルリン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウムには、メラニンの還元作用がある。
さらに、リン酸アスコルビルマグネシウムには、チロシナーゼのはたらきを妨害することで、色素沈着を抑える。
ビタミンCエチル(3-O-エチルアスコルビン酸)に関しては、チロシナーゼのはたらきだけでなく、チロシナーゼ関連タンパク-2のはたらきも妨害することで、ドーパクロムからDHICAが作られるのを抑える。

アルブチン

アルブチンは、グルコシル化したハイドロキノンである。
グルコシル化というのは、簡単に言えば糖類がくっつく反応といえる。
アルブチンはチロシナーゼに直接作用し、チロシナーゼが、ドーパ、ドーパキノンの合成を助けるはたらきを弱める。
アルブチンには、β型とα型がある。
一般的なアルブチンはβ型であり、マッシュルーム由来のチロシナーゼ、ヒト培養細胞由来のチロシナーゼに作用する。
江崎グリコが開発したα-アルブチンは、ヒト培養細胞由来のチロシナーゼのみに作用し、β型より10倍以上強力にチロシナーゼを阻害する。

カモミラET

カモミール(ジャーマン・カモミール)はハーブティーなどでよく知られる代表的なハーブの一つである。カミツレともいう。
紫外線を浴びると、表皮の角化細胞は「エンドセリン」の分泌を促進する。
エンドセリンはメラノサイトを増殖させ、メラニン合成を促進させる因子のひとつである。
カモミールに含まれる「ルテオリン」と「プロシアニジン」には、どちらも「エンドセリン」のはたらきを弱める性質がある。

カモミールの花から水、エタノール、BG(1,3-ブチレングリコール)で抽出したエキスを「カミツレ花エキス」と呼んでいる。
カモミールの花からスクワランで抽出したエキスは花王独自の成分で「カモミラET」と呼んでいる。

マグノリグナン

ホオノキ(朴の木)という、モクレン科の落葉高木がある。
ホオノキの葉(朴葉)は、殺菌作用があり、朴葉寿司として使われる。魚や山菜などを具材としたちらし寿司をホオノキの葉(朴葉)で包んだものである。
また、朴葉の落ち葉は火に強いので、朴葉味噌、朴葉焼きといった郷土料理の材料となる。自家製の味噌に、ネギなどの薬味や椎茸などの山菜をからめ、それをホオノキの葉(朴葉)に乗せて、コンロなどで焼いたものである。

ホオノキの樹皮は「厚朴」といい、これは生薬として使われる。収斂作用(肌を引き締めたり、発汗をおさえる作用)、利尿作用、去痰作用(たんを喉から喀出しやすくする作用)などがある。ただし、筋弛緩作用のある成分や、運動神経の末梢を麻痺させるような成分も含まれている。

厚朴の成分であるマグノロールやホオノキオールには、抗酸化活性があることがわかっている。
(参考 フェノール性二量体の抗酸化活性と抗菌活性 緒方正裕(青森大学) より)
これらの物質は、フェノール性二量体化合物といわれている。これらの厚朴の成分に着目して開発された成分が、マグノリグナンである。
マグノリグナンは「5,5′-ジプロピル-ビフェニル-2,2′-ジオール」ともいう。
マグノリグナンが、メラニンの合成を抑制することが分かり、そのメカニズムは、チロシナーゼのはたらきを妨害しているのではないかと思われたが、それは実験によって確かめられなかった。
その代わり、マグノリグナンによって、チロシナーゼの量が減少していたことが明らかになった。

もともとチロシナーゼは細胞内に存在するのリボソームで生成され、細胞内のゴルジ体で糖鎖付加を受けて成熟する。糖鎖付加というのは、タンパク質に、多くの糖類が連なったものがくっつく反応である。(チロシナーゼなどの酵素は生体内で作り出されるタンパク質を基につくられるのだ。)
このあとメラノソームに転送配置されて、チロシナーゼは酵素としてはたらく。

マグノリグナンは、これらのチロシナーゼが成熟する過程をじゃましたり、チロシナーゼを分解していると考えられる。
(参考 K Nakamura, et al(2003)「Down-regulation of melanin synthesis by a biphenyl derivative and its mechanism.」Pigment Cell & Melanoma Research(16)(5),494-500. abstractが https://doi.org/10.1034/j.1600-0749.2003.00084.x で読める)

ルシノール

ルシノールは、4-n-ブチルレゾルシノールともいう。
レゾルシノールはハイドロキノンの位置異性体である。(水酸基の位置が異なる。)
レゾルシノールにはチロシナーゼのはたらきを阻害する作用が見られたものの、皮膚への刺激性があった。
レゾルシノールに4位にアルキル基をつなげた誘導体がルシノールとなる。
開発はポーラ化成工業で、日本では1998年に医薬部外品の美白有効成分として認められた。

ルシノールがチロシナーゼに作用することにより、ドーパからドーパキノンが産生されるのを阻害する。
ルシノールがチロシナーゼ関連タンパク-1に作用することにより、DHICAなどの分子が重合してメラニンが産生されるのを阻害する。

エナジーシグナルAMP(アデノシン一リン酸二ナトリウム)

もともとAMPというのはアデノシン一リン酸(アデニル酸)といわれ、遺伝子のDNAやRNAを構成する単位となる物質である。
また、エネルギーの放出・貯蔵にかかわるATPはアデノシン三リン酸のことである。ATPは地球上の生物の体内に広く分布し、真核生物や真正細菌の全てが利用している。
生物が、物質の代謝や合成するときに必要なエネルギーとして、利用している物質だといえる。

残念ながら、細胞のエネルギーであるATPの量は、加齢とともに減少する。
AMPには細胞のエネルギー代謝を活発にするはたらきがあり、ATPの産生を高めることができる。
細胞内にAMPが十分に存在すると、糖(グルコース)の細胞への取りこみが促進される。糖はATP産生の燃料となることから、代謝が活性化し、細胞分裂サイクルが促進される。
これが皮膚の細胞で行われれば、表皮のターンオーバーの遅れが解消される。
エナジーシグナルAMPは、大塚製薬が開発した天然酵母由来のAMPである。

アゼライン酸

アゼライン酸は、小麦、大麦、ライ麦中に含まれている成分である。
チロシナーゼのはたらきを阻害する作用がある。

レチノール

脂溶性のビタミンAの一つで、ビタミンA1のひとつである。
レチノールは皮膚の細胞の分化を促進する、必須栄養素である。肌のターンオーバーを促進させる。

ハイドロキノン

ハイドロキノンは、イチゴやブルーベリー、コーヒーなどにも含まれている。
日本では厚生労働省により2%までの配合が許可されているが、それ以上の高濃度では病院での処方が必要。

ハイドロキノンと同じように、メラニン色素の合成を強力に抑制する物質に、ハイドロキノンモノベンジルエーテルというものがある。
1939年、特定の手袋に含まれたハイドロキノンモノベンジルエーテルが、色素脱失を起こすことが突き止められ、美白に使えると考えられ、配合したクリームが1950年代に販売された。
だが、ハイドロキノンモノベンジルエーテルは色素細胞に対する毒性が強く、メラニン形成細胞(メラノサイト)を破壊し、不可逆的な白斑が生じることが判明。日本では配合禁止となった。

紫外線について

美白のためには、紫外線は浴びないほうがいいということになる。
光老化科学の最前線
の監修・著者を務める前田憲寿氏によれば、シミの原因について

この原因は、中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)のうち340nmより低波長のUVA-IIによって引き起こされる(中略)
UVBの防止の目安であるSPFが30程度の日焼け止め化粧品を使用することを薦める。
https://www.cmcbooks.co.jp/products/detail.php?product_id=4861
(刊行にあたって)より引用、2015年

と述べている。

UVBは波長280-320nmの紫外線、UVA-IIは波長320-340nmの紫外線、UVA-Iは波長340-400nmの紫外線である。

また、前田憲寿氏は過去に、とあるスキンケアを特集するサイトでコラムを執筆していたことがある。そのコラム記事は現在削除されている。
https://web.archive.orgによるキャッシュ
その記事では

人間の表皮は100µm~200µmほどの厚さで、真皮は1mm~2mmほどの厚さがあるので、ヒトではUVBもUVAも真皮の浅い部分までしか到達しません。

と述べていた。

また、その記事には波長300nm~400nmでの、紫外線の皮膚への透過率のグラフがあり、
・真皮の200μmの深さの透過率が約5%~10%弱であること
・表皮の透過率が約15%~30%であること
が示されていた。

波長によって透過率が大幅に変わるものではないことを覚えておくとよいだろう。

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